吸血鬼は、人間よりも永い時を生きます。
多少の怪我では死にませんし、傷の治りも早い。
人間よりもずっと速く走ることができるし、力だって強い。
……だからこそ、寂しい日もたくさんあるのでしょう。
それでも、人間を、寂しさを埋めるためだけの道具だとは考えていないと、そう思いたいのです。
その人だからこそ共に生きていたいと、吸血鬼にとっては瞬きにも満たない時の中で消えてしまわないでと、差し出す手のようなもの、なのではないでしょうか。
……こんなに話しても、結局は私の妄想でしかないのですけれど。
[妄想であり、想像であり、理想なのだろう。
汚い部分も多く見てきたけれど、もう欲しいと望みはしないけれど、遠くに見える景色はせめて、綺麗なままであって欲しかった。
黒の瞳へわずかな小波が立ち、ゆっくりと瞬きを繰り返す。]