―夜半―
[夜が近づくにつれて、陣内の慌しさが増してゆく。
魔軍の猛攻を前線で出来る限り食い止めてもらっている間に
モーザック砦への移動を開始した人々を尻目に――…
双子は逆向きにしばし寄り道した。
すなわち前線見物である。]
あはっ、動くお城は今日も絶好調だなあ。
『遠目で見るだけよ。アイツに近づくのは嫌だもの』
わかってるって。食べられちゃ敵わないからね。
[遠くからでも、魔王の居城たる其の威容は充分感じられる。
今まで何度も見たことはあるが、
蹴散らすべきニンゲンたちを前に威圧感を放つ姿は、やはり一層の見栄えがあった]