― 廊下 ― 耳じゃなくて ……えーと[言いよどむ隙に髪をかき混ぜられる。少し長い前髪が瞼の上を擽っていった。他人に触れられること自体を恐れていたのは最初だけ。むしろ気晴らしになる。そんな風に思うようになったのは、無理やりの思い込みか、自然な変化か。――もう、忘れてしまったけれど]