[ 神魔の眷属たる魔人が、森の主を『姉さま』と呼ぶのは、ほんの戯れ。
外つ国の習わしを聞き齧ったか、或いは、風に乗り見物にでも出かけた事があるのか、それとも前世の記憶でもあるのか、真実を知るものは、今生には居ないけれど。 ]
さて、酔狂の宴に招かれたのは、幾人だろうね。
[ ふう、と、桜色に染めた指先に息を吹きかければ、枯葉色の翅に桜の紋を染めた蝶がひらひらと風に舞う。
ひらり、ひらひら、舞う度に、蝶の姿は増えていき、やがて八方へと別れて飛び去っていく。 ]
どんな希いを見せてくれるか、楽しみだ。
[ 『ねえ、姉さま』…と、最後の呼びかけは音にはならず、薄紅の唇だけが言の葉を型作って笑った。* ]