うん、この辺りでいいですよ。
[開けたそこは、森の奥にある丘だった。
奥は崖、そして川。天高く昇る月がよく見える。
満足そうに空を見上げていると、おそらく足で背中を蹴られたのだろう。重力に抗うことなく倒れ込んだ。
眼鏡が宙を舞い、視界がぼやける。]
まったく、最期を楽しむ時間くらい分けてくれ――っ。
[そのまま横っ面を踏み付けられ、さすがに回る口も止まった。
口内が切れた感触に、口の中へ血の味が広がる。
人の血は美味なのに、どうして自身のそれは美味く感じないのだろう。
そんなどうでもいいことを考えながら、眉間に皺を寄せて、月光に煌めく剣を見つめる。]
どうぞ、一思いに。
[冷たく平坦な声がそれだけを囁き、振り落とされる風圧を肌に受けた。
その瞬間まで目を閉じることなく、生の終わりを見届けようとして――]