――…ごめん、ごめんね。 泣くつもりなんて、ないのに……。[意識しても震える心が涙を止めてはくれなくて微かな嗚咽まじりの声を少年へと向ける。初めて会うはずの彼が懐かしく、ずっと逢いたかった、と思えてしまう。彼の呼ぶ名は間違えるはずもない少女自身のもので] 如何して、私の名前――…[知ってるの、と続けようとすれば、足元で行儀よくお座りする愛犬が一つ吠えた。]