[しかし>>30の彼女の故郷のことが口に出れば動きは止まり、
言葉は詰まる。]
……故郷が今も存在しているのなら良いじゃないか。
生きたくても生きられない奴なんて山ほど居る。
『この星に生まれた』という理由だけで長生きできない運命を背負う奴だって。
一方、生き残ってしまったせいで罪悪感を背負い続ける奴だって居るんだ。
[ぼそりと呟く一言には、羨望、悲嘆、諦観、郷愁――
既に何なのか分からぬ感情が入り混じる。
己の過去のことについては、ほぼ他人に話していない。
正確に言えば、トゥランタに住んでいた時代のことを。
聞かれても孤児で施設に拾われた以降のことしか語ることは無かった。]