フェリクス!今日は密集隊形での槍の取り回しを教えて下さい。
[ 厳しい集団訓練の合間に、教えを乞いに行けば、大抵、カナンも混ざりに来た。 ]
俺が先に稽古をつけてもらってるんだ、お前は後にしろ!
[ 同じ年のくせに共同生活に先に入っていたからと、先輩風を吹かせる金の髪の少年とは、当時から何かにつけて張り合い、競い合う好敵手だった。
しかし、決してカナンを嫌っていたわけではない、とは、フェリクスも知っていただろう。
父が英雄と呼ばれる戦士であり、元首にも選ばれたばかりだった関係で、どこか他の少年達には遠巻きにされて馴染み辛く、本音でぶつかり合える存在は、正直カナンだけだったのだ。
その頃から、実力も戦術の才も、彼は抜きん出ていたのだけれど。
それでも ]
お前にだけは負けないからな。
[ 幾度も、そう宣した思いは、今も変わってはいない。* ]