……。
…………リエーフ、筋肉がいるわ。
[口からそんな言葉が飛び出すのに任せたまま、ドアノブを握ったポーズで呆けたように硬直する。
ついさっきまではいなかったはずの大男が、いつの間にやらツアー客の最後尾に加わっていた]
『…………筋肉という名称の生き物はいるまい』
[もっともな指摘が白いライオンの口から飛び出し、ついでに嗜めるようにぽふんと前足で脚を叩かれた。
えぇ、そうねと生返事を落しながら、工事の方かしらと遠巻きに視線を送る。
観光客というよりは、異人館の補修に訪れた業者さんっぽい容姿だと勝手に思った。
なんというか、この異人館の雰囲気と見事に噛み合っていない。
異人館と言えば耽美な雰囲気、という女子高生の貧相な発想の所為かもしれないけれど]