[10年前のあの日、カークを轢きかけた馬車から飛び降りて安否を問うてくれた少年は上等な服を着た貴族の子だった。相手の肩越しに馬車の後ろに掲げられている紋章を確認すれば、辺境伯たるノイアー家のものだ。直に言葉を交わすなんて、普通はありえないこと。] な、なんだよ、いきなり。 叱られるぞおまえ。[動転して噛み合わない返事をしたが、大丈夫、このドキドキは恋じゃない。]