[アルビンが牙を受けるまですごした年月が29年。
そして、「親」に囚われ、吸血鬼として調教を受けたのも29年。
だから、この試練を乗り越えたら自由にしてやろうと、「親」は楽しげに言った。
それが本気かは分からない。
でも、アルビンにはそれに縋るしかない。
今まで、何度騙されたのだとしても]
……は、あ……。
[死せるこの身は、もう息苦しくなど感じないはずなのに、「親」がわざと残した人間としての矜持が、人間らしい行動をさせる。
流れていない汗を拭い、一向に近づいて来ない城を見上げた]
[ クカァ── ]
[背後で鴉どもが嗤う]