─ 平原 ─
[>>120革の小手を経て己の肉まで貫く程の勢いだ、この一撃で決めるつもりだったのだろう。
聞こえた舌打ちに微か浮かぶは、首の皮一枚繋がった生と、熟練の戦士と対等に戦えている誇らしさ。
それも腕から苛む激痛にすぐ歪み、更にそれに捕らわれまいと食いしばった歯にかみ殺されるけれど。
絶好の機を逃せないと横に振るった斧、青銅の刃がフェリクスの脇、掠るではなく確かに捉えた手応えに、更に力を込めて薙ぐ。
そうして己の右手がしっかりと振り切ったと、左腕から槍が引き抜かれるはほぼ同時。
塞ぐものが無くなった傷からは赤が遠慮なく流れ落ちるが、先の傷を縫った糸が千切れるは抑えてくれている。
くらべものにならない痛みはあるが、指は動くからまだ戦える。問題無い]
貴殿相手に、なりふり構っては…
勝てぬ、だろう?
[く、と浮かべた笑みは、この状況では似つかわしくない程に清々しいもの。
仕切り直しと戦斧を構え直した、次に動くが互いに最後の一撃となろう*]