― 回想:個室 ―
[領主の靴はもうすぐ14%ほど完成する。
――フランツの先祖を遡ると名家になり、例えフランツが過ちを犯してしまったとしても1度くらいはその恩恵を受けるだろう。
しかしフランツの家自体は、多岐に枝分かれした名門の数ある葉のうちの一枚に過ぎなかったため生活面での恩恵はほとんど受けていなかった。
とはいえ、フランツが若くして自分の店を持てたのは家の―名前の―力が大きかった。
フランツが生まれた時から靴屋を営んでいた家は贅沢とは無縁に細々と生活していた。
たまにうまい話が舞い込んできたと思うと、その度に騙されてお金を取られている親を見ていた。
自分の店を持った時、親を反面教師にして気を付けているつもりだったが一度だけ大金を騙し取られた。
―世の中、そんなにおいしい話はない―
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