神父 ジムゾン

[そう、きっと今は何も、気付くことが叶わない。

書き物に集中していて、
静まり返った冬の湖面のようなその表情や、
その水面のさざ波のような、ちいさな揺れも。
その指先の動き、震えそうになった脚。>>82

――彼女が教会に来た折のこと、
傷を負った経緯。
そういったものを、尋ねたことはない。
ただ、傷が癒えるまで、あるいは癒えても。
当然そうすることのように、
自分たちと同じ食事を差し出して、
時にはそれは、
見事に焦げた何かだったりもしたけれど――、
そんな風にして、過ごしてきた。
（なお、その後食事事情も、
　大層変わることとなるのだが――）

それは、案じていないということとは決して違う、何か。]