異変に気が付いたのは確認事項を確認し終えて店へ戻ろうとした、まさにその時だった。]
……人?
[自分と同じくらいの年齢だろうか。女性が一人倒れていたのだ。]
これ、血……。
[よく見るまでもなく、その女性は血に塗れていた。空気に触れてからどれだけの時間が経っているのか、血は既に固まっており、まるでその女性の身体の一部であるかのようだった。
血がこの上なく似合っていた。血を流しているのではなく、まるで血から女性を求めて張り付いているかのようにすら思えたのだった。雪に染み込んだ血の赤は、女性を中心に根を伸ばし、雪からすら生命力を奪っているかのような、どこか禁忌めいた神聖さを主張する。]
生きてる?
[近づいて、空気の温度と同じような声質で問いかける。最初、助けるという考えはなかった。誰からも望まれていなかったから。
しかし、女性は生きてるかという問いかけに「死にそう。助けて。」と“淀みなく”返してきたため、店へと連れ帰って介抱することにしたのだった。今度は、そう望まれたから。]