>>118
― 城内 ―
[少女は少しずつ、実体から幻影へと存在を薄めていく。
睨みつけ気色ばむ青年の勢いに押されたかのように。]
ふふ。可愛いのね。
もと元老の吸血鬼なら、貴方の目の前にいるのに。
殴るつもりなら、今のうち。もうすぐ、私、消えちゃうもの。
[ふわりと笑って、青年を見つめる。紅色の瞳が妖しく輝いた。]
でも、爪より、武器より、牙がいいな。
私のここに――突き立てて?
ね、セルウィン。
[人差し指で襟元を開き、白い首筋を晒す。
そこだけはっきりと実在を感じられる、なめらかな肌。
甘い血の匂いと温度までが、吸血鬼の本能に訴えるように。**]