[クララの言葉>>115>>116に、ペーターはただ歯がゆい思いを募らせるばかりだった。
ペーターは島から出たことはない。
だからここがどんなに美しいところか、理解することはできない。
そしてこの島がどんなに美しい場所だったからといって、
それはいつだって親に置いて行かれる寂しさや
過去のことを思って苦しむ住人達を前にどうにもできないもどかしさや
それでも尚島に縛られ生きていくことへの理不尽を、受け入れるだけの理由にはならなかった。]
急ぐ理由なんて…この島が嫌いだから、少しでも早く出て行きたい。
…それじゃあいけない?
[声は、少し震えていた。
ペーターは思う。
きっとクララは間違っていない。
でも、自分だってきっと、間違っていないはずだ。
だからペーターはうつむいたまま、カウンターから一歩遠ざかった。そして、]
…ごめん。僕、今日は本、いいや。また今度貸してね。
[逃げるようにして、図書館を飛び出した]