[視界が赤く染まる。
ここ数日の間、最後の最後まで理性の奥底で押さえつけてきたその衝動が、津波のように押し寄せれば。
理性を、言葉を、根こそぎ奪い尽くして浚うそれを、
今度こそ、どうしても、抑えることは出来ずに。
服に染みついた血の匂い。
もう一時も耐えることが出来ないほどの、脳を食い破り心を刻みつくす……
果てしない、底のない、飢餓感。]
――……!
[からり、音を立てて、地に落ちる楽器と弓。
声を上げることも出来ず、割れるように痛む頭蓋を両手でぎり、と掴み。
やがて、顔を上げれば、その双眸は、見間違えようもない血のような朱の光りを帯びて、光っていただろう。]