[教会を訪れたのは、一人の女…のようであった。
12年前、静かな夜のことである。
赤子を抱いた聖職者のようであった。
深くベールを纏った顔は判然とせず、ただ後年、
非常に美しい人だったとの証言が残されている。
赤子はごく小さく、ありふれた布に巻かれて、
その手には銀色に光る首飾りを握っていた。]
マレンマ、と。この子の名です。
親のないこの子をどうか…こちらで育てて頂きたいのです。
この首飾りはこの子の物。
大切に身に着けさせるが良いでしょう。
この子には、大切な使命があるのですから。
──── くれぐれも、大切に。