[そうっと、ギターの音を鳴らせば、シメオンは気づいたように、音を合わせてくれるだろうか。
バイオリンとよく似た、けれど全く異なる音が、絡み合って、交じる……。
彼の音が、その軌跡をたどるのに、付き合いながら、自分の軌跡も混ぜながら。
音が無くなり嘆いたことも、少女と会って救われたことも、自分の歌を笑われたことも、かじかんだ指先を温めつつ、ピアノを弾いた時のことを。
時折、音が飛ぶのはご愛嬌だ。
くすくすと笑って、彼にバチンと目を瞑る。
不意に彼の音が、冷たさを帯びる。
切ない音と、どこか冷たい暗い音が、消えては現れ、消えては現れ。
なら、それに寄り添うように、温かい音を。
焚火がパチパチとはぜるように、誰かにだきしめてもらったときの温度を……。]