[見出したその男の姿は、記憶にあるよりもずいぶんと老けていた。
敏腕宰相と呼ばれた眼光の鋭さは変わらぬままに、顔には深い皺が刻まれ、髪には白いものが多く混ざっている。
年月と重責とが男の命を削り取っている。
そう思えた。]
アルブレヒト。
[声の届く距離で、馬の足が緩んだ。
視線が交わり、周囲の喧騒が遠のく。]
なぜ父を殺したのかは聞かない。
なぜ国を売ったのかも聞かない。
おまえが教えてくれたことは、今も俺の胸に根付いている。
[話をしてくれと、忙しい彼の足元に纏わりついて邪魔をしていた過去が、ほんのいっとき胸を過ぎる。]