[わたしは今、幸せなんだろうな――とリゼットはどこか他人事のように思った。
毎日食事を取れて、暖かい寝床だってある。
庇護してくれる優しい大人と、罵倒も暴力もない心穏やかな日々。
けれど、伯父と姉がいなくなった二年前のあの日から、リゼットは幸せを享受することが出来なくなっていた。
いつか自分のしたことの報いがくるのだと、心のどこかでいつも思っていたから]
……風、出てきましたね。
出かけるなら、パメラさんのマフラー出さないと。
[そう、パメラのことは恩人以上に感じている。
だから心配などかけぬよう――心の裡は表に決して出さぬよう、笑んでみせるのだ]