[手にしたリンゴの齧り跡に唇を寄せて、
カリ、前歯だけで削ぎ落とした。
そうすればほんの少しだけ、喉が潤うから]
お前は。ガートルード。
………何か知っている?
私の倒れてしまっている間、
何が……?
[ほんとうに何も知らないと言いたげに
相手に細めた片目を向ける。
その手に握られた銃はその切っ先こそ
相手に向けられてはいないが
引き金に指先がかかり、いつでもそれを
引くことができるようにはしていた]
私は、…………
燻った銀色……?
そんな毛並みしか、覚えていない。
[あえてそう付け足したのは、
見てもいない毛並み。
クレステッドの髪色を思い出しながら]**