[ ―― 恋をしている。と。
最初に気付いたのは何時だっただろう。
それはもしかしたら、彼女と初めて会った日。
彼女と彼女の兄との別れ際>>0:188だったかもしれないし、
彼女と逢いたいと遺跡で望んだとき>>1:281だったかもしれない。
始まりは何時のことだったか、もう思い出せない。
…ただ。それまでロー・シェンは恋を知らなかった。
知識として持ってはいれども、
『全ての才能は国家の為にある』とされている
学者の故郷の星では、愛だの恋だのと言った言葉は
低俗なものと定義づけられた書物の中にしか登場しなかった。
全ての子供が優秀な"親"同士の遺伝子を元に、
巨大な試験管の中で培養される、科学技術に優れた星。
…ヴィヒレア。
極端な選民思想のあまり、
「優秀とされた人間以外は子孫を残すことが許されない」星。
事故で亡くなった学者の親>>0:120もまた、学者だったけれど、
国家が二人の遺伝子を遺すことを選択したから子を成した。
全てが国家と、ヴィヒレアに生きる人間の種の存続の為であり、
そこには恋愛感情という不必要な感情の入る余地は無く。 ]