[楽器か肩かと問われれば、一瞬の躊躇い後、楽器の方をぐいと差し出す。>>58
どちらを選ぶかではなく、両方ノーという答えを飲み込んだ、そういう間。
扱いに乱暴さはなかったが、差し出す手に躊躇いはなかった。]
………こっちで。
[ハダリーに対してはかろうじて出た礼が>>189、この男に対しては素直に出てこなかったのは、
今というわけではなく――
時折妙に子ども扱いされているような気がして、癪に障っていたから。
そうして歩き出した歩調は、それまでと比べてやや確りとしたもの。
医務室に着くまで、一度も手を借りることはなかっただろう。]