― 回想 ―
シコンの領主が帝国に寝返った?
[ それ自体に驚きはあった、だが、どこかで有り得るかもしれない、と納得している己の心も確かにあった。
シコン領主ファミル・アンディーヴは、対帝国への中央の強硬策を民の安全を犠牲にするものとして危ぶみ異を唱えていたという噂は聞いていたからだ。
それでも以前に何度か対面した彼女は、争いそのものを嫌う女性に、男の目には見えていたのだが… ]
それで、シコンの砦は?艦隊はどうなった?
[ 矢継ぎ早に尋ねたのは、状況を確かめるという職務上の理由の他にもうひとつ、無意識下の理由があった、と、気付いたのは、シコン港内で沈没させられた艦の名を聞いた瞬間のこと ]
なん、だと?
[ 瞬間、報告する兵の胸ぐらを掴みそうになったのを、すんでの所で押さえた ]