(>>110)
旅行は、多かれ少なかれ日常とかけ離れたものだとは思いますが…。
[静かな場所も他にもある。しかし、灯りが消えたかの表情に、彼女も矢張り訳ありなのだろうか、と一人ごち。それを先程から、無粋を繰り返している自分が問うてもいいものかと。ただ気遣わしげな表情で見た。]
[自分への問いに少し動揺したが、それ自体は隠す事でもない。彼女の背後に着いて、崩れ掛けている石畳、その足元に気を配りながら話す。]
わたしの家は軍人の家系なので。兄も、父も祖父も軍人でした。勿論祖父より前の代も。わたしは末子ですし女ですから、特に軍に進む事は期待されていませんでしたが、やはり、そのような環境にずっと居ましたので。
[当然の様に、兄や父の、その背筋伸びた背中を見てきた。]