人見知りってわけでもないんだけどね。
君が色男だから照れたのかもしれない――イテッ! たたくな、ばか!
[ひとしきり寸劇を演じ、それからしばらくの間、彼と話を楽しんでいただろうか。
行先は同じ行くかと問われれば勿論と答える。>>73
彼らとのひとときは心地よかったし、行き先の村について語りたいこともあった。あまり人と深く関わることのないたちだが、許されるなら彼らともう少し関わりたいと、そう思っていたことも確か。
けれど、立ち上がったそのとき、視界の端にちらりと輝くものが写る。]
んー、待ってね。わたし、ちょっと気になるものがあるから、寄り道してく!
[それはほんの偶然。光の悪戯が反射してみせた、どこかの誰かの双眼鏡>>56。遠目にはそれと分からないけれど、何となく気になった。
そして気になるものがあれば確認せずにはいられない性格だ。彼らがそれに気づいていたかどうかは定かではないが、二人が歩き出したなら、その背中を見送っただろう。]
……君たちの願い……「は」……ああちがう、「も」かなあ。
叶うと、いいな。
[その背中が木立に消えるころ、追いかけたつぶやきは、届くことはなかっただろう]