―――……。[ごく僅かな。確かに、耳が拾い上げた言葉に。危うく声をあげそうになった。独り言めいたそれ。独特の発音と抑揚。忘れるはずがない。発した声に聞き覚えはなかった。ゆるり、と腰をあげる。風下はこちらで、だからこそ声が流れてきたのだろう。じりじりと近づいて、相手の意識が逸れるのを待つ]