……先にも話した通り、『この場所の出来事』は、基本、忘れる方向で術式をかけています、が。
心に作用する術というのは、完全な形で仕上げる事は、ほぼ不可能……いえ。
本来、許されるものではない、と思っています。
……ですから、覚えていたい、と願う事を止める事は。
ぼくには、できませんよ。
[嘆息と共に吐き出したのは、遠回しの願いの肯定]
……ただ……願わくば、その記憶に潰される事のないように。
それだけは、祈らせてください。
[静かに言葉を綴った後、翡翠と橙の光をふわりと灯す。
二色の光が散り、帰還がなされた所で、魔導師は最後に残った雪色の許に佇む花精へと目をやった]