―― 副艦長室 ――
[ノックをすれば、応えはあったろうか。
彼女はそこに待っていて、おそらくはすれ違わないようにしてくれていたのだろう。
彼女の思いは、まだ、何も分からずにいる。
自身の出自が、何を恐れさせ、何を決意させているのかも。
他に優先することがあればそちらを、>>274
そう言ってくれた。
優先すること――人狼を、探さなければいけないこと。
けれど、いま一番自分にとって優先したいことのために、来たのだと。
何の話だろうかと顔を上げ、]
……、
[開口一番の問いに、目を見開く。>>274
ああ、船のデータを見たのだろう。
そのうち確認するとは思っていたけれど、思ったよりも早かった。
胃の腑をぐっと押すような重さは、おそらくは、自身が何者であるかを――化け物であることを、知られることへの、言葉には言い表しがたい、なにか。
――… 同じ、などとはとても言えない、
あまりにも深い、彼女の苦しみなど、
何も、知らずに、
知ることも、出来ずに。
けれども、顔を上げ、]