─ 騒動より前〜そして ─
[ 王宮を歩いていたあたしを >>74
呼び止めたのは、どこかの部屋から出てきた兵士
聞けば、ウェルシュ王子より外交長官の妻を
王宮へとお連れしろ、との話で。 >>98
威圧感のある兵士よりも
女性のほうが適任だろうと強面の彼はそう告げて
あたしに外交長官の家の場所を託す。
── その場所は、すぐに分かった。
駆けつけ、本当に簡単に彼の死だけを告げると
今にも壊れてしまいそうな危うさで
奥方は脆く、泣き崩れる
あたしは彼女を支えてあげるしかできない。
だけど、気丈にも。
夫に会いたいと、妻は言っただろうか。
そうして、あたしは、王宮へと
外交長官の妻をお連れしている。
これはまだ、騒ぎが起きるほんのすこし前。
騒ぎは、あたしたちが王宮に着いてから
その外で、起こることになる。 *]