[かつて何度かナイフを振るう少年を見たことがある。
優しくて、正義感が溢れる男の子。
妹とも仲良くしてくれて、自分にとっても弟みたいで大切な存在だった。
だがその時は、少年の目は憎しみにぎらついて、呪詛を吐きながら、心臓を貫くための道具を握りしめていた。
哀しかった。それでも止めることはしなかった。
海辺でぽろぽろと、空虚な瞳から涙を零していた少年と。
何も言えなかった、無力な自分がフラッシュバックする。
生きる理由になればいいと思った。それが例え憎しみでも。
強い感情は人を動かす原動力になる。
しかしいざ思いを果たそうとしても、直接的な仇である人狼はすでに滅ぼされ。
手を貸していた
ずっとどこかで思っていた。
だったらその刃を受けるべきは、俺なんじゃないかって。]