──現在・第四エリア、りんごの木──
[娘は殺されるつもりは毛頭なかった。
それが救いであるとも、思えなかった。
大切であった人たちは自分を遠ざけたし、
だからこそみんなみんな嫌いになった。
大好きだったから。大切だったから。
そのヒトの心が砕けてしまった時、
それは彼女の時も同じ。
彼女を裏切り者と信じ込んだ時と変わらない。
大切だったから、大好きだったから。
その裏切りは許すべきものでは無い。
況してや同胞を守る為ならば、
娘はそれ以外を全て許さないのだ。
その所業が鬼畜に堕ちようとも。
下衆の極みを行くものでも。
だからこそ、ガートルードの声が
柔らかなものであっても(>>117)
騙されてはいけないのだ。
彼らは知恵ある麦。こちらに歯向い牙を剥く。
だから娘は穏やかに見える相手に震えを返し、
じり……、と後退りしたのだ]