―戦場西方― 『敵巡洋艦、まだ―――… 沈みません!』[水雷の爆発を視認したマスト上の見張りが、驚愕の声とともに報告する。ナハティガルの船尾を水雷が捉えたのは、これで2度目である。けれど尚も彼の巡洋艦は――まさにその“浮沈”の名の通り――沈むことなく周囲の水雷艇を蹴散らして、牙携えたまま“鉄門”を支援せんと駆けてくる>>89。「ええい、ウルケルの巡洋艦はバケモノか!」と兵の誰かが呻いたのも、無理からぬことであった。]