[夜霧 静寂より幾分か小柄なそれは、成長期に差し掛かったばかりの年頃の少年だ。
鮮やかな色味の青い髪、体を包むは漆黒の燕尾服。
ただし、そのデザインは正装というには装飾が過ぎる。
袖口や裾から覗くシャツにはフリルがふんだんにあしらわれ、ベストは差し色のような紫。
胸元に芳しく咲き誇るのは、一輪の青薔薇だ。
被ったシルクハットにも、同様に青い薔薇飾りが乗って人目を引く。
曲はいよいよその音色を高め、弓を扱う手が優雅に踊った。
張り詰めた旋律が尾を引いて長く伸びあがり、演奏の終幕を彩る。
最後の音が闇の中に吸い込まれると、静寂の翼が辺りを包んだ。
微かに残る余韻の中、少年が蛇めいた金色の瞳を開く]