― 第二エリア:フードコート ―
腹、減ったな…
[重い足取りでフードコートを歩く。
左手には、硬球程度の大きさの黒いキューブを手持ち無沙汰に片手で転がす。
重いまぶたをこすりもせず、ぼんやり辺りを見回している。]
[このだらしない風体の男は、金を貰って荷物を運ぶ、民間の配達屋《メッセンジャー》を生業としている。
と言っても、この男が自分で仕事を稼いでるわけでなく、『ボス』と呼ばれる人物の指示で所定の場所で荷物を貰って、所定の場所に届けるだけの仕事だ。
こんな天涯孤独のろくでなしを面倒見てくれるなんて、『ボス』はなんて物好きなんだろう。頭の片隅でそんなことを思いながらも、こんな自分に仕事をくれるボスには常々頭が下がる思いだった。
仕事の性質上、一処に留まらず、年中渡り鳥の生活だ。場合によっては、一つの仕事で海を越え空を渡り、数多の星々を股にかけることもある。
今回がまさにその最たる例だった。]