― マーチェス平原・辺境伯との邂逅(回想) ―[混迷を極める戦場の中で、ディークもまた刃を振るっていた。疾走する馬の上で、鐙と膝だけで身体を支えて立ち、二振りの山刀を操る。後に従う兵は、ごく少数。敵も味方も、細切れの部隊がそこかしこでぶつかっている。戦場の状況を把握することは、どちらの軍も困難だっただろう。だがディークには心を結んだものたちがいた。互いに声を掛け合えば、戦場の形も見えてくる。主力から切り離された敵将の所在も、また。]