―パン屋―おーい、兄ちゃん邪魔すんぜー![数分後、悪戯小僧の姿はパン屋のドアの前にあった。無遠慮な声を投げながら、ドアをくぐって店内に踏み込む。靴に付いた雪を店内に落っことしてゆくのは、もはや日常茶飯事である]カイザーゼンメルふたつとー、ローゲンブロートとー。[店に入るなり、慣れた様子で目的のパンを指差した。今日のお使いは朝食パンとライ麦パンだ。それから、うーんと首をひねって店内をぐるりと見回した]