…彼は"彼女"のことがまだ好きだったんだよ。
それでも、病気にその気持ちすら
奪われてしまうのが怖くて言えなかった。
彼女に自分を殺してくれと言うことも出来なかった。
…莫迦だろ?
そんな心の底から莫迦な男がいたって話をね、
誰かに――聞いて、欲しかったんだ。
……それから彼はどうなったかって?
ごめんね、そこまでは知らないんだ。
ただ…この話を知っているのは僕だけだから
僕に何かあったとき、彼のことを誰も知らないのは可哀想でね。
こんな時に誰かにするような内容でもないし、
君に聞かせようと思ったってわけだ。