― 夢と現の狭間 ―
>>110
[――……誰かに呼びかけられた気がする。
遠い父母か、いや違う。
まだ少しだけ幼さの残る、静かな声だ。]
[ふわふわとしたもので包まれるのを感じる。
誰かの吐息が聞こえた。それは少し、震えていただろうか?
何かを前にして、静かに怒る幼子のように。
薄く目を開ける。
ぼんやりと霞んだ先に見えた、綺麗な瞳。白い頬。髪の毛。
夢は、ただ一匹消えゆくだけの自分のために、愛しい彼の姿を結んだのだろうか。]
――――リ、コ。
[もっと傍に、この腕の中においで。
そう思って、手を伸ばしたところで、世界が暗転した。]