― アレイゼル領 ―
[将兵の招集ひとつにも、短くない時間はかかる。
当然だ。今回の戦いはこれまでの様な、最低限の私兵ではすまない。
私兵の数が、三桁からひとつ桁を増やす、本腰の戦い。
それを待つ間、男は王国北島の、各貴族諸侯へと檄を綴る事となる。
既にこれ以上、立場を不明瞭にする予定はない。
ここからの男は、明確に『解放軍を支持する貴族』としての立ち居地に着く。
それは、アレイゼルの領主、と云う貴族が解放軍を味方する事実。
警戒心を多いに構える貴族諸侯は、疑うだろう、畏れるだろう。
その大半は打算と命欲しさの為に王府軍へ当然の様に着くだろう。
然し、この明瞭な立場ひとつで、貴族諸侯へと訴えかけるのだ。
『解放軍は無思慮に短絡的に、貴族という存在を排除する者達ではないのだ』と]