ー回想・船内某所ー
[周りに誰も居ないことを確認すると二人へ能力を行使した
ポケットから取り出したのは、シレネの花を象ったブローチ。
ブローチをそっと揺らせば
それは薄桃色に輝く天の川のような
極微小な粒子となって恋人の元へ舞い降りるだろう
薄桃色に輝く粒子は、人間はもちろん人狼の優れた知覚を持ってしてさえも認識出来なかったはずだ
輝く粒子は恋人をふわりと包み込む
粒子が掌の上に舞い降りた雪のようにさらりと溶けて消えた時
それは彼らの身体のどこかに、シレネの花のような形をした痣を作ったかもしれない
…恋人たちがそれに気付かなかった可能性も十分あるし、恋人同士以外には見る事さえ出来ないのだが。
恋天使の能力は同じ痣を持つもの同士に密かな囁きの能力を与えるだろうが、彼らの間に恋愛的錯覚まで与えられたかは分からない。
個体差大きいからな。