[ 「タダで通すしてやるわけには…」と、口にされた言葉には>>0:78躊躇い無く頷いた。
同時、男の視線は艦橋近くに掛けられた戦斧へと向けられる。
あの戦斧は、英雄ゲオルグ・ヒューベンタールの象徴であると同時に、ウルケル海軍そのものの魂の象徴でもある、と男は思っている。
政治家達の失策等は男には関係ない。モルトガット帝国が力に任せて海を奪おうとするのなら、それを跳ね返すのは当然の事だ。
重く剛い鋼の斧、若き皇帝が翼持つ者としてこの海を睥睨しようとも、その戦斧が舞い降りる事を許すまい。
それに、翼を持つのは、彼等だけではない… ]
…守備隊についての情報はまだ入ってませんからね。本来ならシコンの砦からの情報が頼りになるところですが、あそこを押さえられているとなると、分断されて海峡内に入れずにいる艦もいるかもしれませんし。
[ シコンの名を口にする時の男の口調は殊更に固い。
最初にその報を聞いた時の気分が未だに抜け切らないからだ、との自覚はあった ]