[漆黒の爪は深紅に濡れて、返り血は黒衣が隠す。 されど、願いを伝えるほど傍に寄れば、こびり付いた血臭が彼女を穢す。治癒と活性を司る身に死と怨嗟の纏いは辛かろう。>>81] 貴様は……、夜の娘か。[魔族に拾われた人の子が居るとは聞いていた。 それは、夜の静寂によく似た毛並みの手弱女であるとも。 闘争に滾った鋭い眼光を醒ますように腕を軽く振り、爪を濡らす鮮紅を払った。]