[マルセル・シュタインメッツは士官学校を卒業し、通信科に配属される。
元々要領のいい弟は、男のように感情を殺す事はなかった。
気の許せる友人にも恵まれて、表向きは優秀な士官として職務に当たっていた。
けれど時々見せる危うさは様子を見守る男には気になり、それがこの世に繋ぐ未練となった。
そして事件から五年後、終戦を迎え。
男の父ヘルベルトと弟マルセルは共に戦争を生き残る事となった。
母と共にヴィスマルク事件戦没者慰霊碑にやって来た彼らは花を手向ける。
哀しみから少し落ち着いたような面持ちの彼らの顔を、男は傍で見守っていた。]