[怪我は大したことない、という彼に、またかと、ため息を吐くのもつかの間。
歌は勘弁してくれといわれ、むすーっと顔を膨らます。]
……次、絶対ですよ?
[昔、自分も歌い方を知らず、音痴であったことは棚に上げ。
こんな状況で、"次"の約束が出来たことに、ひそかに口元を緩めた。
澄み切ったバイオリンの、最初の一音が響く。
激しさを見せたかと思えば、ゆっくりと、そしてアップテンポに。
ダイナミックで、なのに繊細で。
(山賊の宴会だなんて、誰が言ったんだか。)
時折、胸が締め付けられるように、切ない音を響かせるのは、彼自身の歩んできた道なのだろうか。
呼吸すら、奪われるように、その演奏を聞き入った。
そして、その演奏を邪魔しないよう、そっとギターを抱えなおす。]