― 砦近辺 ― ……ここは……。[ぐるり、周囲を見回す。まず目に入るのは、聳え立つ砦。僅かな時間での移動に、改めて主の力を感じつつ、娘はひとつ、息を吐く] ……前に、人の気配がある。 恐らくは、砦の兵だろうな。 ……知らされると厄介だから、先に刈り取る。[戦えぬものをひとつ連れている以上、ぎりぎりまで敵に囲まれるような大立回りは避けたい、と。そう伝えると、返事も待たずに走り出す。目指すはすぐ近くにいる兵たち──恐らくは、警戒のために配備された者たちだろうが]