―――…ひとつだけ、お願いがあるんです。
この事件が無事片付いたら……
一緒に、飲みに連れて行ってくれませんか?
[いつも口を酸っぱくして、お酒はほどほどに!と言う口で、
そう願いごとを告げる。
女性は禁酒の星に生まれて、
お酒なんて、飲んだこともなかったけれど。
「『ソマリさんから、褒めてくれていたって、聴いちゃいました。
真面目で可愛い部下に、ご褒美ください?』と、
軽口のようにいう声が、まだ微かに震えているのに、
気づかれなければいいと、思いながら。
こんなお願いで、この人をつなぎ留められるなど、思わないけれど。
死なないなんて、誰にも言えないだろうこの状況だから、
代わりに、そんな他愛もない約束でもいいから…ほしかった**]