― 『神魔の領域』・森の中 ―
[蝶の導きを受ける、なんてことには頭が回らないままだったが。
開けた場で男の姿を認めたその時、蝶が自身の前方へ出てひらひら舞うのは見えた。
けれどそれだけでは確証には至れず、しばらくは男の姿を追跡して]
[彼がこちらへ視線を向けぬまま声を掛けたのはその時だった>>95]
確かに楽しいものではありませんね。
『領域』へ踏み込んだ者を幾人も目にするのは。
[そう声を発しつつ、木陰から離れて姿を露わにする。
短いが丁寧に切りそろえられた黒髪の下で、サークレットに加工された翡翠が小さく揺れる。
緑の差し色が入った民族調の衣装は巫女装束だが、神殿での儀式用とは違いやや裾が短く、動きやすさを確保している]